地域防災と災害発生時に必要な連携の形を考える。 第2回かまいしDX勉強会を開催しました!!

第2回かまいしDX勉強会を開催しました!!

2023年7月27日(木)に《地域防災と災害発生時に必要な連携の形を考える。 第2回かまいしDX勉強会》を釜石みんなの家とオンラインのハイブリッドで開催しました。

この勉強会は「近い将来に訪れるデジタル化社会を見据え、DXが私たちの生活や地域にどのような変化をもたらすのか、また誰もが使える仕組みとして広げていくための取り組みを紹介し、地域DXのカタチを考える。」という目的で立ち上げました。

釜石の人はもちろんですが、他の地域にお住まいの方も地域のDXに興味がある方であれば、どなたでもご参加頂ける場として学びの輪を広げていきたいと考えています。

 

災害支援・防災減災とDX(デジタルトランスフォーメーション)

2回目となるDX勉強会。今回のテーマは《地域防災と災害発生時に必要な連携の形を考える。〜災害支援DXイニシアチブ〜》とし、JVOAD(特定非営利活動法人 全国災害ボランティア支援ネットワーク)(以降JVOADと記載)の明城事務局長を講師に迎えてお話を伺いました。

前半は災害支援における連携の仕組み。後半では、今年6月に発起会が行われた《災害支援DXイニシアチブ》についての2部構成です。

災害対応に必要な連携の仕組みを過去災害の事例から学ぶ

前半の災害対応における連携の仕組みでは、大きく分けて以下の4つのテーマに沿ってお話しを頂きました。

  • JVOADについて

  • これまでの災害被災地における支援の現状と課題

  • 被災地支援における三者連携について

  • 被災者支援コーディネーション

JVOADについて

JVOADは、2016年に設立されたNPO法人で、災害時の被災者支援活動が効果的に行われるよう「連携の促進」と「支援環境の整備」を図る事を目的にしています。



きっかけは、東日本大震災。全国各地から多くのNPO等が支援に駆けつけた一方で、それらの組織的な支援を受け入れる仕組みが明確ではなかった。この経験から災害発生時の支援の受入調整に関する仕組みをカタチにする必要があるということが設立の経緯となります。



では、なぜそんな状況が生まれたのかというと、支援(ボランティア)団体一般ボランティア(個人)を区別してそれぞれに適した受入の体制を構築していなかった。という行政側の側面がひとつ。
また、支援当事者である支援(ボランティア)団体同士の連携の不足。という側面がありました。



個々のボランティアについて少し整理をすると、個人のボランティアについては災害ボランティアセンターといった受入体制はあったが、図の右側にある「自発的に組織として支援活動を行う」ボランティアについての受入や調整を行う仕組みが無かったと言うことです。



東日本大震災以後、これらの事を踏まえて国の防災基本計画にも「行政・NPO・ボランティア等の三者で連携」すべきと明記されており、年を追うごとに具体的な連携体制の強化に関する文言が追加されています。



内閣府からは連携の必要性や役割分担などが上図のような形で示されています。
「被災者支援」のために「NPO・企業等」・「社会福祉協議会」・「行政」が、それぞれのリソースを持ち寄って十分な情報共有と調整をベースに連携し協働で必要な支援を行う。事が重要になります。 



災害が発生すると被災した方々の避難生活を支えること、被災者の生活を再建すること。の大きく分けて2つの支援が必要となります。
これら被災者支援については行政が制度で行う事と、民間が自発的に行うことを複合的に考える必要があるとのこと。

 


東日本大震災以降、NPO等が被災地において果たす役割は多岐にわたり、個々の団体が持つ多様な専門性が活用されるようになっています。



災害中間支援組織が有効に機能した例として、熊本地震事例が挙げられた。
地元の支援団体を中心とした情報共有会議・三者連携・災害中間支援組織が立ち上がったことで、様々な情報の整理やセクター間の調整といった機能が有効に動きだしたことで、支援のヌケやモレを最小限に抑えると言った成果を上げている。




三者連携を有効なモノとするためには支援側の出来ること、被災者に必要と思われる支援の全体像を俯瞰する必要がある事からいくつかの視点でそれらをまとめたのがこれらの図となります。



また、制度で行われる支援と自発的に行われる民間支援についての補完関係(密接な連携の必要性)についてまとめたのがこちらの図となります。



熊本地震以降も毎年のように大規模な災害が発生しているのですが、いくつか連携の成功事例も生まれてきている。

 

被災地で繰り返される課題。。。

ここまでは、被災地支援のこれまでの状況や三者連携の必要性や有効性などを伺いましたが、被災地において繰り返し起きている課題についても伺いました。現時点では有効な打ち手はまだ見いだされていませんが、今後DXやデジタルの活用等がこれら課題の解決へ向けた糸口になるのでは。という期待を持っているとの話がありました。



では、なぜこのような課題が繰り返されるのか。
その理由として考えられる事を挙げてみます。



大きく分けて3つ。支援の担い手、コーディネート人材、共通認識
この3点を先に示した繰り返される課題(14分野)のいくつかに当てはめてみます。






災害支援中間支援組織と被災者支援のコーディネーション

これら繰り返される課題についての分類や要因はある程度整理できたと仮定し、ではそれをどのような方法や手段で解決に導くのか。といった点を次にお話頂きました。



これまでのお話から「三者連携」の具体的な形として「災害中間支援組織」を含めた被災者支援のコーディネーションが重要であることは考えられます。
「住民からの多様なニーズや困りごと」と「多様な専門性を持った支援者」を有機的につなぐ機能。支援の抜けや漏れを防ぎ、ニーズを的確に把握して必要な支援をつなぐ機能をそれぞれの地域ごとに形にすることが必要だと考えていると明城さんは話されておりました。

災害支援DXイニシアチブ

後半では6月に組織の発起会を開催した「災害支援DXイニシアチブ」についてご紹介頂きました。


前半では「三者連携」や「制度支援と民間支援」などのお話を頂きましたが、もちろんそれが今後発生するであろう災害に対応できる仕組みというわけではありません。

災害発生後の初動を地元の担い手だけで運用できるのかどうか。行政による制度支援の運用方法。そもそもボランティアが集まるのか。地域を含めたNPOの出来ること出来ないこと。どれをとってもその時その時で変化します。

そう考えると、災害支援は「やるべき事」だけを並べても解決しない事に気づかされます。
では、そうした課題を解決するための方法を少しでも広げていく。そうした思いが今回紹介する「災害支援DXイニシアチブ」です。



災害被災地において有効な支援を行うためにもっとも必要なモノ。それは情報です。
被災者ニーズ、支援状況等の把握はもちろんですが、日々刻々と変化する情報の更新や整理を効率化することが重要となります。



とはいえ、災害支援の現場では、支援者等の経験に基づく予測や慣習によって支援活動が進められていく現状が少なからずあります。それ自体が間違っているとは思っていませんが、情報とデータを活用した現場の可視化と根拠を持った支援を仕組み化した上で良いバランスを考えていきたいとの話がありました。



 


続いて、発起会メンバーでもある岡山NPOセンターが2018年の西日本豪雨の時に開発・活用した災害支援のシステムの一例を引き合いに、ツールをベースに今後の災害発生時に活用できるようにしていくこと検討しているとのお話もありました。



必要な情報を整理・共有し、これらのツールを活用することを含めDX化(デジタル活用)を進めていこうと考えているが、課題も多くあり、以下の様な項目を挙げられました。

  1. 現場で動く人達のICTツールに対するリテラシー(対応力)の向上
  2. システムを開発する企業の災害現場に対する理解向上
  3. 官民における情報共有や協働の仕組み作り

代表的なモノを挙げてみましたが、これら課題を民間(NPO)サイドでDXを活用するという観点で解決に近づこうと考えています。



では、このような現状を踏まえて今後どのようにしていくのか。というと
全国でどのようなツールが活用されているのかといった調査や、地域を問わず活用できるツールのパッケージ化などを考えているとの事です。



災害支援DXイニシアチブを中心とした今後の展望として、全体構成図はこういった設計をされており、それぞれの強みを活かしたDXを活用した災害支援の推進を考えておられるとの事でした。




参考までに災害支援DXイニシアチブの概要を示しておきます。

まとめ

前半後半を通して、災害支援現場における連携や情報共有の必要性、災害現場で繰り返される課題、DX(デジタル)を活用した解決への道筋など、多岐にわたる話題が出ましたが、全体を通してみると一連のストーリーとして素直に受け止めることの出来るお話しでした。

参加者の皆さんからは、疑問や質問を講師に投げかける。というよりも、今後どのようにデジタルを活用していけば良いのだろう。どのような仕組みが必要なのだろう。といった趣旨の活発な意見交換が行われました。

以下に参加者からの意見等を抜粋します。

  • 災害支援DXイニシアチブについて、災害発生時に活用することを前提としたツールだと、いざというときに活用できない事になりかねないので、日常の下地づくりが重要かと思うがどうか。
  • その懸念は充分認識しており、災害支援中間支援組織を通じて普及や人材育成を行っていきたいと考えている。(講師)
  • 全てをデジタルに頼るだけではなく、人と人とのつながりやコミュニケーションといったアナログ的な部分を否定せずに上手に組み合わせることも必要。
  • スマートフォンを含めたツールに馴れていない人達が今後取り残されないようなサポートが必要。

活発な意見交換の中から、防災を単独で捉えるのではなく、日常の暮らしの中で日々意識を持ち続けるための工夫が必要であること。地域のDXを進めていく上で、日常生活と災害発生時を切り分けない(両面で活用できる)仕組みを考える事が重要だ。といった学びが得られました。

 

ご参加頂いた皆様、講師を務めて頂いた明城様、ありがとうございました。
次回もまた有意義な学びの機会を創りたいと思います。

 

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