~地域の仕組みを考える~第1回かまいしDX勉強会を開催しました!!

2023年5月18日(木)に《~地域の仕組みを考える~ 第1回かまいしDX勉強会》を釜石みんなの家とオンラインのハイブリッドで開催しました。

この勉強会は「近い将来に訪れるデジタル化社会。DXが私たちの生活や地域にどのような変化をもたらすのか、また誰もが使える仕組みとして広げていくための取り組みを紹介し、地域DXのカタチを考える。」という目的で立ち上げました。

釜石の人はもちろんですが、他の地域にお住まいの方も地域のDXに興味がある方であれば、どなたでもご参加頂ける場として学びの輪を広げていきたいと考えています。

福祉分野を「SMARTふくし」に押し上げるエンジンに

さて、そして第一回目のテーマは、富山県黒部市を中心に「福祉分野のDX」を実践している小柴徳明氏を講師に迎えてお話しを伺いました。

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小柴さんは富山県の黒部市社会福祉協議会の職員であると共に、2022年4月に設立された一般社団法人SMARTふくしラボの主要メンバーでもあります。

今回の勉強会では、一社)SMARTふくしラボが《福祉分野のDX》にどのような役割を果たしているのか、そしてどのような取り組みを展開しているのかについてお話し頂きました。

福祉分野のDXを加速させるための組織 Smart-Fukushi Labo

まず始めに、SMARTふくしラボとは何か?なぜ福祉とDXやデジタル化が結びつくのか。というところからお話しが始まります。

福祉業界に限らず、多くの地域やセクターで話題になる決まり文句として《人が足りない》《お金がない》《余裕もない》という現状があります。もしもそれが問題なのであれば、その原因は何か?どうすれば解決に向かう打ち手を見いだせるのかを考えなければならない。



そのためにデータを活用し、数値化できる部分をきちんと分析したうえで、EBPM(証拠に基づく政策立案)的な手法で課題を解決することが必要になるという趣旨のお話しが続きます。



デジタル活用が目的ではない。本当の目的を見失わないように

そうした調査や課題の可視化を行うのだけれども、そこで見いだされる打ち手は手法に過ぎないこと。大切なのは、なんのための打ち手なのか、取り組むべき本質は何かを明確にしておくこと。



取り組むべき最重要課題は、地域における持続可能な福祉サービスの供給であり、データ分析、デジタル活用、EBPMはそのために必要なツール(手段)に過ぎない。
このことは、福祉分野に限ったことではなく地域の課題を地域全体で解決する。という観点で考えれば多くの課題に当てはまる。

SMARTふくしラボってなに?

次にSMARTふくしラボと社会福祉協議会の関係性、役割の違いに話題は移ります。


 



現状、地域における福祉サービスの主な担い手は市町村域の社会福祉協議会であり、それ自体はたぶん今後も変わらない。ただし、福祉人材の不足など、先に述べたような課題を解決するためにも地域の福祉ニーズに対応するためにも広域的な連携をともなった活動が必要になる。

また、企業との連携も含めた他セクターとの協働や民間財源の活用も考えると《独立したプラットフォーム》が必要になることから2022年4月に黒部市社会福祉協議会から派生する形で設立された。



現在は、3年間で福祉分野をSMART化することを考えている。デジタルやDXを理解した上で上手にそれらを活用することをめざしており、第一段階として福祉団体や組織のネットワーク化 第二段階として紙をファイルに置き換えていくデジタル化 第三段階として業務改革、変革といったDX そして最終的に地域全体の最適化 といった段階を踏んで目標に到達する流れを進めている。



また、一方で今後様々な事業を多セクター連携で実行する際に必要になるコーディネーターとしての役割も重要。組織間の連携、他分野の組織や企業との連携を考えると習慣や思考の違いを調整する役割が必要になります。


福祉分野のデジタル化・DX

 

SMARTふくしラボでは現在、学び合う場・研究する場・実験する場といった3つの場を持っている。



具体的には、

  • 事業構築 研究から入り、将来的には収益の伴う事業に育てていく
    • ふくしモビリティPJ
      • 移動の問題と福祉サービスをミックスして展開するプロジェクト
    • シェアリングPJ
      • 食糧支援のネットワークづくり、福祉車料の協働送迎バスの事業化
  • 支援・コンサル 伴走支援・デジタル化のネットワークを構築する
    • デジふくネットPJ
      • 学びの場を通じてデジタルリテラシーの向上を目指すネットワーク
    • DX推進PJ
      • デジタル相談窓口 フォーラムの開催など 
  • シンクタンク 調査研究を掘り下げていく。
    • シンクタンクPJ
      • しっかりとデータ活用が出来るようにする。
      • 社協等との連携で調査研究を進める

といった構成で事業を展開している。

具体的な取り組み 福祉の連携で課題解決

次に、具体的な事例としてトヨタモビリティサービスと連携して展開している《クロスモビリティサービス》に話題は移ります。


このプロジェクトは、黒部市を含む近隣市町村が行政区を越えて連携し、《地域の移動手段》という共通の課題を解決する取り組み。



ここで大切なのは《事業主体は誰か、誰が中心になって進めていくのか》という事。

もちろん行政もこの取り組みに関して関わっていただくのだけれど、行政が中心になってこの取り組みを進めていくことを期待するのは難しい。

どの部署が担当するのか?担当者は誰か?(異動した場合どうするのか?)など、なかなかすり合わない問題が出てくる。



そこで、この取り組みはSMARTふくしラボとトヨタモビリティ基金が事業主体となって実証実験を進めていくこととした。

これは今回のプロジェクトに限らず、民間が主体となって官民連携で行おうとするプロジェクト全般に言えることで、大事なポイントになる。



このプロジェクトで目指しているのは、デジタルを活用して移動サービスの利便性を向上すると共に、福祉現場の効率化・負担軽減を重要な目的としている。



現状、アナログで管理されている送迎業務をデジタル化することで業務が大幅に効率化できる。

更に、デジタル化することによって、他の事業者とも仕組みを共有する事が出来る。
これによって、これまで点(事業者ごと)で行われていた送迎サービスが面(エリア連携)での送迎サービスへの移行可能性が見えてくる。



これらのプロジェクトを展開することによって業務の大幅な効率化を実現し、本来の目的である福祉分野の人材不足の解消を形にしていく事に繋がっていく。

 

具体的な取り組み 福祉を超えた連携と共創・地域資源フル活用

ここまでは福祉分野の中での連携という枠組みで送迎業務のデジタル化・DXというお話しでしたが、ここからは福祉の領域を超えた連携と地域資源をフル活用する。という話になります。


 

 


今後移動困難になるであろう対象者に向けて開発される介護予防総合事業のメニュー。


 


ここで重要なのは、外出=介護予防という部分です。

このメニューを開発するにあたっての課題感は以下の通りです。

  • 2024年介護保険法改正
    • 介護予防総合事業への効果的なメニューの不足(市町村裁量)
  • 移動手段の縮小
    • バスの減便、タクシーの減少、福祉送迎の運転手確保
  • 移動財源の確保
    • どのような財源を使うか。助成金では継続性に課題


先に述べた送迎のデジタル化(左側)は業務の負担軽減効率化に重点を置いた仕組みですが、ここで考えるGoトレ(右側)は地域の資源をフル活用すること、既存の移動サービス事業者と連携すること。加えて、外出移動支援による自主トレプログラムの開発という展開を想定している。



左側は福祉拠点への人の動き。右側は福祉センターなどの拠点から人を連れ出す《Goトレ》の仕組み。

外出先(地域)が自主トレーニングのフィールドになる。ということが重要なポイント。

そして、《Goトレ》を展開する上で以下の3つのポイントを押さえています。

  • ウェアラブル
    • 福祉サービスの提供を無人化する(自主トレ)
  • 介護施設
    • 施設を使わない。新たに作らない。(地域資源をフィールドにする)
  • 移動支援財源
    • 新しい組み合わせからのマネタイズ(外出×介護予防)


このプログラムにはいくつかの要素が組み込まれている。

  • モビリティトレーニング
    • 移動手段を知る・学・体験する
  • 自主トレーニング
    • ウェアラブルを活用し、行動・運動量をデータとして蓄積可視化する
  • 介護予防効果
    • 蓄積可視化されたデータを管理し活用する

といったサイクルを設定し、プログラム全体をデータエビデンスに基づく仕組みとして展開していく。



福祉分野だけではなく、公共交通・民間事業者との連携へと広げていく。

そして、大切なのは既存のサービスも含めた持続可能性を考える事。



さらに、デジタル(送迎アプリ)を活用することで民間との送迎連携を可能とし、利用者も送迎の様子をスマホ等で確認する事が出来るようになる。

これが、福祉の分野を超えて交通分野との連携をして、いろんな地域の課題をハイブリッドで解決していく。という事例の共有です。

 

《まとめ》ともに考え、ともにつくる。

以上のような内容で、小柴さんから福祉分野のDXについて事例共有を頂きました。

講師を務めて頂いた小柴さんとは、以前からDXをテーマにした勉強会をやりたいよね。というお話をしており、やっと今回それが実現した。という経緯があります。

今回は小柴さんがご専門の《福祉》をテーマに取り上げましたが、地域におけるDXを考える際には、福祉だけではなく《行政のDX》《産業のDX》《NPOのDX》など、それぞれの分野のDXが並列で存在しながら地域における最適化《ローカルDX》を進めていくことが重要となります。

DXに取り組み活用する上でベースとなる《データの活用》《デジタル化》《ICT活用》は分野が違っても共通するロジックであることが今回のお話の中からも確認する事が出来ました。

ご参加頂いた皆様、講師を務めて頂いた小柴様、ありがとうございました。
次回もまた有意義な学びの機会を創りたいと思います。

 

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