古いネガを見つけました。
ハーフ版で撮られたそのコマには、
まだ小さかった子どもの頃の僕が写っていました。
きっと父が僕を連れて、
埠頭を散歩しながら撮ってくれたものでしょう。
ハーフ版だから、おそらくカメラはオリンパス・ペンあたりでしょうか。
少しカビが付いたそのネガを焼き付けると、
撮影している父の影も写り込んでいました。
僕はその写真と埃をかぶったオリンパス・ペンを持って、
同じ埠頭に行きました。
父と同じ場所で同じカメラを使って写真を撮ろうと思ったのです。
父が撮った写真を見ながら、
父がどの場所で、
どんな思いでいたのか考えながら、
僕はシャッターを切り続けました。
地面が揺れたのはその時です。
今まで感じたことがないぐらいの大きな地震でした。
あまりの揺れの大きさに、
海に波紋が広がりました。
すぐ脇を通るバイパスの高架橋も大きく揺れていました。
なかなか揺れは収まらず遠くの山々を見ると、
砂煙か花粉のようなものが凄く立ち上がっているのが見えました。
僕にとってこの写真が、
最後に撮影した以前の釜石港になってしまいました。
(3月11日 地震があった時)
[place]kamaishi bay [camera]olympus pen [lens] zuiko 2.8cm f3.5 [film]fujicolor 1oo