
2025年10月15日(水)。みんなの家・かだってで、福祉の現場をより良くしていくための学びの時間を開催しました。講師は、22年間社会福祉協議会で現場に携わりながら、「どうすれば支援者が無理なく働けるか」を追い続けてきた、小柴徳明さん(現一般社団法人SMARTふくしラボ)。
今回のテーマは “デジタル化” という言葉よりも、「忙しい現場で、もっと利用者さんに向き合える時間をどう確保するか」 という問いそのものでした。

この記事の目次
① 「現場の時間を奪っているのは人ではなく、段取り」
勉強会の冒頭、小柴さんはこう語りました。「福祉は人と人。でも今、その“人に向き合う時間”が削られている」確かに現場では、電話や確認の往復何度も出てくる同じ質問、書類の作成、情報共有の行き違いなど、こうした “事務や段取り” が、想像以上に時間を取っています。
この負荷を少し軽くできれば、もっとゆっくり、もっと丁寧に利用者さんと向き合える。
その気づきから勉強会はスタートしました。
② 「いざという時ほど、ふだんの仕組みが効いてくる」
印象的だったのが、黒部市での安否確認の話です。以前は半日〜1日かかっていた安否確認が、今では わずか17分 で完了するようになったとのこと。驚きの数字ですが、小柴さんは「デジタルだからすごいわけではない」と言います。"平時の連絡がスムーズだと、緊急時にも人を早く安心させられる。”つまり、人に向き合うための “余白” をつくる準備 なのです。
③ 「地域を丸ごとデイサービス化”するという発想」
続いて紹介されたのは、介護予防プログラム 「ゴートレ」。送迎車や追加の施設は必要ありません。参加者は地域を歩き、バスに乗り、食事をし、買い物をする。これだけで自然に 3 時間の活動ができます。
- 歩数や体調が自然に“見える化”される
- 外出機会が増える
- スタッフは無理なく見守りができる
- 公共交通の利用が増える
これはまさに、“人の力を最大限に生かす仕組み”であり、福祉・交通・健康・経済が同時に良くなる取り組みでした。
④ 現場を守るための「3つのヒント」
小柴さんは、地域課題を解くために必要な3つの視点を教えてくれました。複数の課題をまとめて解く「同時解決」の発想。
1.最初に“誰が担うか”を決めること
2.続けられる形にすること(無理のない負担・費用)
どれも、働く人が疲弊しない仕組みづくり に直結しています。無理なく動ける仕組みがあれば、その分、利用者さんや住民の方に心を向ける余裕が生まれる。。。
そんな流れが自然と伝わりました。
⑤ そして、福祉の本質は「人に寄り添うこと」
勉強会の最後に、小柴さんが語った言葉が心に残りました。「福祉とは、地域の幸せを考え続けること。」福祉はもともと “人を大切にする営み” であり、デジタルはその温かさを補い、支えるもの。人の関わりを薄めるのではなく、人に向き合う時間をもう一度取り戻すための工夫、それが今回の勉強会で見えた大きなテーマでした。
次回につながる学び
今回の第1回では、“考え方” や “ヒント” を小柴さんから学びました。そして次回、 釜石の福祉現場で働く方々の“生の声” を伺います。現場でどんな困りごとがあるのか、何に時間が奪われてしまうのか、「もっと向き合いたいのに…」と感じていることは何か、釜石ならではの工夫や苦労や“現場のリアル”をみんなで共有し、今回のヒントと結びつけることで、釜石らしい福祉の方向性 が見えてくるのではないでしょうか。
おわりに
「もっと人に向き合える働き方」をテーマにした今回の勉強会は、“デジタルを使おう”ではなく、“支援の時間を大切にするための工夫をみんなで考える場” となりました。次回も現場のみなさんも一緒に釜石の福祉の未来を描く時間にしていきたいと思います。






