《開催報告》とうほくNPOフォーラムin陸前高田2019

開催報告

とうほくNPOフォーラムin陸前高田2019
◆日   時  2019年11月27日(水)13:00-17:30
◆会   場  陸前高田コミュニティホール
◆参加者人数  147名
◆メディア掲載 ●岩手日報●東海新報●三陸新報●読売新聞

オープニングセッション

「持続可能な地域の仕組み −NPO に期待される役割とは何か?−」

オープニングセッションは、講演とディスカッションの2部構成で行いました。


<講演> 加藤 憲一氏 (神奈川県小田原市長)

神奈川県小田原市の加藤憲一市長をお招きし、「持続可能な地域の仕組み」について、小田原市における取り組みとともにお話いただきました。

●持続可能な都市づくり
小田原市は、持続可能な都市づくりをテーマとして取り組みを行ってきた。政策についても、持続可能であるか、という視点で策定、実施してきた。そのように取り組んできたことに対して、SDGsが後からやってきてくれたという気持ちで、心強く感じている。

●まちづくりの基本的な枠組み
小田原市は人口約19万人。漁業・農業・林業の産業バランスがとれた地域である。また、市民の力が非常に強い地域でもある。
行政運営の指針として、市民と共に未来を考えるというコンセプトを持つ、第5次総合計画「おだわらTRYプラン」がある。このプランには、1)新しい公共をつくる、2)豊かな地域資源を生かしきる、3)未来に向かって持続可能であるという3つの命題がある。
2つ目の枠組みは、「地域別計画」である。市内のすべての地域で、自治会を中心に数年間をかけて策定された。各地域にスローガンがある。
3つめの枠組みは、「自治基本条例」(平成23年制定)の存在である。ここでは「市民が、生き生きと暮らし続けることのできるまちの実現」を目標としている。そのために必要なキーワードは、市民力と協働である。この条例が、行政の憲法のようなものだと考えている。条例の内容の検討には、委員会のほか、市内在住、在勤、在学の方も参加できる環境づくりが導入された。

●まちづくりの担い手
まちづくりの担い手となるのが、まず①地域コミュニティであり、この強化は重要なテーマだと考える。自治会・民児協・地区社協・老人会・PTAなどがバラバラに活動するのではなく、協働できるような仕組みとして「まちづくり委員会」が全地区で発足している。
また、②市民活動も活発で、小田原は元来、市民活動に非常に積極的な地域である。行政として、推進委員会、補助金制度や交流センターを通して後押しをしっかり行っている。
③民間(事業者等)の担い手も重要である。商工会議所や商店街連合会、観光協会と連携をしている。直近では、SDGs実行委員会を立ち上げ民間の発想を大事にして推進している。
担い手としての④行政の役割について。「市民が主役の小田原」という言葉を徹底している。職員間にも、いま市民協働が欠かせないという意識が強くなっている。異業種交流や研修会に力を入れている。その結果、さまざまな協働の実践を重ねてきている(会場では実践事例の紹介)。また、地下街の活用や市民交流センターなどまちづくりを後押しする拠点も整備している。

●新たなチャレンジ
①「おだわら市民学校」では、地域の課題を知って、実践につながる場として行われている。
②「自治体SDGsモデル事業」に選定され、実践を進めている。
③地域循環共生圏づくりのモデル都市に認定されている。

●NPOに期待される役割
「市民力」、「地域力」、「協働」が、持続可能な地域社会への歩みを支えるものと考える。
期待される役割には、協働による課題解決の担い手となること、高い専門性と実績に基づく提案と実践の呼びかけ、情熱を持って活動できる人材とネットワーク、民間ならではの発想と柔軟性がある。
一方で、地域というフィールドでの実情(地縁や地域秩序)において、NPOがうまく連携できていない課題もある。実践を通じた更なる「融合」が進むことが期待される。

●(最後に)これからの社会
小田原市として、「持続可能な地域社会」の現在の定義を持っている。(配布資料にて紹介)
人口減少や高齢化など、経験したことがない時代局面を迎えている。国が手を打つのを待つのではなく、地方都市の実践の現場にこそ、日本の閉塞の突破口があると考える。
震災後に希求された、持続可能な地域社会、人の幸せ、地域の絆、真の豊かさへの視座も大事である。
また、何よりも人を育てる、実践を育てる、繋がりあうことが大切だと感じている。


<ディスカッション>

登壇者:加藤 憲一 氏 (神奈川県小田原市長)

    戸羽  太 氏 (岩手県陸前高田市長)


(進行)鹿野 順一   (特定非営利活動法人@リアス NPO サポートセンター 代表理事)

●市民との協働について
鹿野:市民の協働についてどのような視点を持っているか?

戸羽市長:例えば、仮設住宅の見回りをNPOが担ってきてくれたが、時間の経過によって、ニーズが変化している。ニーズに合わせてどう次を考えていくか。市民活動は、陸前高田では、震災後にほぼゼロから一気に積み上げてきた。小田原では、平時からの取り組みや環境の蓄積がある。
また、沿岸地域における、高齢者の移動・少子化の課題など、SDGsの視点で解決に取り組んでいきたい。現在、SDGsにかかるプラットフォームを作っており、NPOとの連携も重要である。

鹿野:行政職員の意識改革と、住民の意識改革についてヒントをいただきたい。

加藤市長:行政職員にとって、市民はクレームを出すという意識が先に立ち、共に問題を解決していくパートナーという考え方は弱かった。しかし取り組みを行っていけば、見本となる職員が出てくるようになった。10年間取り組みを続けたなかで、市民と協働することが当たり前になった。
長く自治会活動を務めていらっしゃる方達には、行政への期待が大きく、基本的には行政があらゆる事を行うという意識が根深くあった。当初は行政からの働きかけに強い拒否反応があったが、職員が一生懸命向き合い続けたことで、意識が変わり始めた。しかし、地域差があるのは事実。

鹿野:市民やNPOの意識のなかに、行政が私たちの方を向いてくれていないという意識もあるといえる。どんな形でアプローチをしていけば良いか。

戸羽市長:行政として、NPOにどれだけ頼れるのかという懸念もある中で、NPOと共に活動し、様々なお願いもしてきた。NPOのなかにも、本当はもっと自分たちがやりたいことがたくさんあると思う。考えているものを発信してほしい。ただ、行政でできることとできないことがあり、互いに力を出し合える文脈を探すことが必要な時もある。みんなで意見を出し合っていかなければならない。

加藤市長:提案型協働事業を行ってきている。補助金事業もあるが、発想だけあってもともとの活動基盤がない場合、行政の支援頼みで立ち上げる活動には厳しさがある。小田原の場合は、専任職員がいるNPOの方が少なくて、小さい規模のところが多い。団体の特徴がわかり、顔がみえると、いろんな事業で連携をしやすいと感じている。

加藤市長:行政の思考回路や立ち位置、予算の動かし方を知っていただけるとありがたい。NPO側でも、自分たちのやり方を多少変えてでもやるという姿勢も必要。

鹿野:地域において、これまでの取り組みと新しい取り組みが重なりあっている。どのように見ているか?

戸羽市長:地域性や伝統的なものがある一方で、震災を経て、これまで付き合いのなかったような人たちともつながることが大事だと考える。持続可能性の反対は、消滅するということ。8年8か月一生懸命やってきたことを無駄にしない事を大事に考えている。サステナブルな地域、つぎの世代の子どもたちのために、手をつないでいこうよ、と伝えたい。行政とともに行う事業は、税金を投入することである。未来志向のNPOと一緒に仕事をしていきたいと思っている。

鹿野:震災のあと、被災地のNPOが使えるお金は、通常にくらべて、とても大きなものだった。いま、資金がなく活動ができないという壁にぶつかっているNPOが多い。

鹿野:民間と行政の役割分担について。

戸羽市長:陸前高田市の場合、窓口業務は民間にお願いしている。絶対公務員がやらなければいけないことと、そうでないものがでてきていると思う。同じように、NPOが行った方が良いものができるというケースがたくさんあると思う。このように、NPOで行えばもっと市民にとって良いものができるということがあれば提案してほしい。
ぜひ、積極的に提案をいただき、また、市長が全ての舵取りをするのではなく、もっと各課の担当職員とも共に考えていってほしい。

加藤市長:NPOの立ち上げは、生涯学習など、様々な背景があると思う。小田原で先日の台風で被害をうけた地域の事例で、これまでの防災訓練では避難所に来る人は100人ぐらいだったが、実際には400人だった。他の自治体では混乱があったという報告があったが、小田原の場合は、細かな問題はもちろんあったが、大きな混乱はなかった。それは、これまでの地域コミュニティのつながりがあったからであった。市民活動団体の方達が良い調整をしてくれた。こういった地域のつながりが、財産だと感じた。

鹿野:NPOとして能動的に、提案をもって取り組んでいくことの重要性が話されたと思う。それぞれの役割分担をもとに、コミュニケーションの重要性が確認された。

加藤市長:被災地域で取り組まれてきたことというのは、非常に重要な実践だと思います。このあとの分科会でどんなことが発信されるか楽しみにしている。

戸羽市長:陸前高田の場合、NPOが、震災以降からスタートしていることと、専従で働いている人が多いというのは、重要な視点だと感じている。NPOがいないと本当の意味でのまちづくりが成り立たないと思っている。まちづくりに積極的に参加する、自分の得意分野で活躍する、という姿で子どもたちの手本となってほしい。市内のNPOの人たちと腹をわって話をしたい。NPOの活躍を期待しています。

 


分科会A 地縁組織とNPOのこれから

《登壇者》
     若菜千穂 氏 特定非営利活動法人いわて地域づくり支援センター 常務理事
     宝楽陸寛 氏  特定非営利活動法人SEIN(サイン) 事務局長
《コーディネーター》
     四倉禎一朗   NPO法人いしのまきNPOセンター 専務理事

【開催報告】地域の人に寄り添い、目線を合わせながら地域づくりを

地域課題の解決するためにNPOと地縁組織が、お互いの強みを活かせる協働のかたちとはとはどのようなかたちなのか。新たな関わり方を考える機会となりました。

いわて地域づくり支援センターの若菜さんは、岩手県内陸部の農山村地域を中心に地域づくり支援を行っています。中間支援組織としてNPOは地縁組織が課題と考えていることをどう共有し、どう協働していけばよいかをテーマに、地縁組織の現状と実態、地域課題の抽出やその課題解決に向けた支援、そして支援組織と地縁組織の関係について、事例も取り上げながらお話いただきました。

SEINの宝楽さんは大阪府堺市の泉北ニュータウンを主なフィールドに、多様な主体の協働を推進しながら人やまちが元気になるコミュニティづくりを進めています。ニュータウンの持続可能な社会実現のための地域支援の考え方について、図書館づくりや物々交換のマーケット、持ち寄り晩御飯会などの事例を紹介いただきながら、人と人とのつながりを豊かにするコミュニティづくりについてお話しいただきました。

地域の人と関わるときに大事にすることはという質問に、宝楽さんから「地域の人と目線を合わせることや何回でもコミュニケーションを取ること」若菜さんからは「地域の人に寄り添い、今まで何を大切にしてきたのかを訊ねそれを評価すること」とのお話をいただきました。なかでもお二人とも大事にしていることして「ごはんを一緒に食べること!」が重要ですとのお話がありました。回答で、参加者にとって地域に向き合う姿勢として、とても参考になったようです。

分科会全体としても熱気の高い雰囲気で、最後に参加者みんなで、がんばって地域課題に向かっていこう、エイエイオーと掛け声をかけて締めくくりました。


分科会B 地域における企業との連携

《登壇者》 日下 均 氏 長町一丁目商店街振興組合相談役
      千葉和義 氏 NPO法人Azuma-re代表理事
《コーディネーター》
      深澤秀樹 氏  認定NPO法人ふくしまNPOネットワークセンター常務理事
             福島市市民活動サポートセンター常勤顧問
             元福島キャノン(株)代表取締役

【開催報告】課題解決のための連携の手法や具体的なアクションを考える

仙台市の長町一丁目商店街振興組合相談役の日下均さんは、当時課題であった「商店街の低迷」、「高齢者・障がい者の移動」を解決するため「誰でも行きやすいまちを作ることで地域を活性化する」を目標に地域内の商店とNPO双方に働きかけました。そして両者が課題解決に『タウンモビリティ(長時間の歩行に困難のある高齢者や障がい者に電動スクーターや車いすを貸し出す)事業』を柱とし、同じ手法を取ったことで協働につながったことのお話をいただきました。

宮城県栗原市のNPO法人Azuma-re代表理事の千葉和義さんは、『くりでんミュージアム(廃線ローカル鉄道博物館)』に一体感がないという課題感から、そこで活動する地域おこし協力隊や、施設内の関係団体にヒアリングを実施し、「連携したことはない」けれど「連携に向け話し合う場は必要だ」とお互いに認識していたことが明らかになりました。そこでコーディネートとして『若柳合同ミーティング』を開催。今では定期的に開催され協働の関係性が出来たというお話をいただきました。

お二人のお話から、組織を超えた連携に必要なことは、
① 課題を解決したいと思った時、関係がある組織に積極的に働きかけ課題の共有と共通認識を持つ場をつくり、課題解決に向けて話し合う(知恵を出し合う)。
② 専門的な知識やノウハウをもつ企業に提案する場合は「ミッション(目指すところ)」と「アクション(できること)」をきちんと伝える。
ということを学びました。するとお互いの相乗効果で解決という価値を生み出すのです。

そのためにも、課題と感じたことを地域内の多くの組織と共に考え、知恵を出す場が必要であると感じました。また、企業側もNPOからの提案を待っているとの話もありました。恐れず「提案」することが協働の一歩につながると思いました。


分科会C 地域の作り方

《登壇者》 
     横田能洋 氏 特定非営利活動法人茨城NPOセンター・コモンズ 代表理事 
     小玉順子 氏 特定非営利活動法人おおさき地域創造研究会 事務局長
《コーディネーター》
     三浦まり江 特定非営利活動法人陸前高田まちづくり協働センター 理事長

【開催報告】被災地の未来を見据え、そのあるべき姿を考える

分科会Cでは、市民が主体的に地域に参加していくため、これからの地域社会の中でNPO・市民活動団体に期待される役割を探ることを狙いとしました。

最初に、東北圏地域づくりコンソーシアム(宮城県)の髙田篤さんより、「地域社会の担い手の変遷」として、NPO・市民活動団体以外の主体が地域で果たしてきた役割について配慮することが大切という点を指摘いただきました。

そこから考える「地域の作り方」とは何か、キーワード「地域のつながりをデザインする」を念頭に置きながら、登壇者お2人の事例を伺いました。

茨城NPOセンターコモンズ(茨城県)の横田能洋さんから、多様で異なる立場の主体が、自分の組織の強みや役割を発揮しながら、連携して地域に貢献していく枠組みを作っていく「地域円卓会議」について、協議から協働に至るまでのプロセスや、協議の場づくりに必要な工夫をお話しいただきました。

おおさき地域創造研究会(宮城県)の小玉順子さんから、被災者支援に関わる主体に呼び掛けて開催した「ステークホルダー会議」の事例紹介がありました。話し合いの場への参加と共感を通してつながりを生む実践例を紹介し、地域づくりに対話の場は欠かせないツールであることを熱くお話しいただきました。

全体のお話を通して「地域の様々な主体が連携して課題を解決していく枠組みづくり」が要素の1つとして見えてきました。その上で、「これからの地域社会の中でNPO・市民活動団体に期待される役割は何か?」の問いかけに、横田さんから「当事者に代わって問題を発信すること」が挙げられました。自ら解決するだけでなく、地域に埋もれた問題をこまめに発掘し、多様な主体と共有する場をつくり参加を促すこともNPOの役割の一つであることを再確認した分科会となりました。

 


分科会D 若者の巻き込み方

《登壇者》 矢野 明日香 氏    一般社団法人まるオフィス スタッフ
      立花 淳一  氏    まちづくりサークル「からくわ丸」代表

《コーディネーター》
      成宮 崇史 佐藤 賢 気仙沼まち大学運営協議会

【開催報告】次世代・若者の地域参画の仕組みについて考える

分科会Dでは、「若者の地域参画」をテーマに宮城県気仙沼市で活動している2名の方を登壇者としてお招きし講話をいただいた後、参加者全員でそれぞれの地域の現状を共有するワークショップを行いました。

一般社団法人「まるオフィス」の矢野明日香さんからは、実際に自身も移住者として気仙沼に来てから地域のコミュニティで活動を継続していく中でネットワークが広がってきたことや、「ぬま大学」という2,30代に向けた半年間の人材育成プログラムを行なっていることで気仙沼の若者が町の中で自分のやりたいことを見つけ、実践を通して地域活性に努めていることを紹介していただきました。

まちづくりサークル「からくわ丸」の立花淳一さんからは、まちづくりに全く興味のなかった若者たちが、自分の利益となるようなきっかけ(講話では下心と表現)から人との出会いが広がり、仲間と共に楽しく活動していることが結果としてまちづくりとなっていたこと、「ぬま大学」に参加し、自分が地域でやりたいことを本気で考え、現在はまちづくり協議会のメンバーとしてプランの実践を行なっていることを紹介していただきました。

まとめとして、まちづくりや地縁コミュニティへの参画のきっかけや、自分の思いを見つめながらやりたいことを見つけていき、それをどう地域で実践していくことができるか、丁寧に一緒に探してくれる場や存在の重要性、地域側の受け入れの姿勢としてどのようなことがありがたかったなどを知ることができました。

一方で、それぞれ日々の活動がある中で、若者の思いに丁寧に伴走し、地域と繋ぐ役割などをどう作っていけるか、などの課題はワークショップの中でも提示されていました。

継続的に各地域の現状と照らし合わせながら検討していくべき重要なテーマであることを再認識することができました。

 


【開催報告】 クロージング

クロージングでは、4つの分科会において、議論の成果として出たキーワードを紹介しました。報告は、フォーラムの実行委員で協力をいただいているNPO支援組織の皆さんから行いました。各報告に対して、他分科会の報告者によるコメントも行われました。

(進行)田尻 佳史(特定非営利活動法人 日本NPOセンター)


分科会A

《テーマ》地縁組織とNPOのこれから
《登壇者》
    若菜千穂 氏 特定非営利活動法人いわて地域づくり支援センター 常務理事
    宝楽陸寛 氏  特定非営利活動法人SEIN(サイン) 事務局
 報告者 布田 剛(特定非営利活動法人 地星社)

■分科会の狙い

地域の当事者である地縁組織とNPOが、地域課題をどう共有し、どう協働していけばよいかを考える。

また、地縁組織と現場で活動しているNPOとそこにかかわる中間支援がどう関わることができるのか、ヒントを探す。

■キーワード 「目線を合わせる」

地縁組織とNPOがどう関わっていけばよいかについて、地域の人たちと目線を合わせるというキーワードが出た。例えば、地縁組織の方が年配の方だったりすると、違う年代層が持つ課題を認識できていないことがある。まずは、目線をあわせて、お互いを知りあうことが、課題解決が進む糸口となる。

田尻:目線を合わせるというのは、目の高さを合わせること、それとも遠くの焦点を合わせることどちらもあるだろう。例えば、地縁組織の居住地域と、NPOが目を届かせる範囲という意味で、目線が違うことがある。例えば、この地域で食べることに困っているひとなんていないという認識も、エリアを少し広げると、そういった課題を抱える人も見えてくるようなこと。


分科会B

《テーマ》 地域における企業との連携
《登壇者》 日下 均 氏 長町一丁目商店街振興組合相談役
      千葉和義 氏 NPO法人Azuma-re代表理事
 報告者  木下 雄太(特定非営利活動法人 おおふなと市民活動センター)

■分科会の狙い

企業とNPOは、どのような視点でどう手を取り合っていくのかを考える。

■キーワード 「相互理解と共通価値の創出」

お互いの知恵を出す場が特に必要である。企業はNPOからの提案を待っているはずである。NPOがしっかり提案をしていくことが大切。

田尻:東北の被災地で、企業と活動するというと大きな企業のイメージになりがちであるが、中小企業との協働も可能である。オープニングセッションで、市民提案型についての期待も挙がっていた。NPOからの具体的な提案が待たれている。

布田:分科会Aで議論した、地縁組織との関係においても、「相互理解と共通価値の創出」という視点が必要になると思った。その共通することが何か、を見つけていくことが必要。


分科会C

《テーマ》地域の作り方
《登壇者》 横田能洋 氏 特定非営利活動法人茨城NPOセンター・コモンズ 代表理事
      小玉順子 氏 特定非営利活動法人おおさき地域創造研究会 事務局長
 報告者  高田 篤(一般社団法人 東北圏地域づくりコンソーシアム)

■分科会の狙い

これからの地域社会のなかで、NPO・市民活動団体に期待される役割を探る。

■キーワード 「話し合いの場づくりを」

分科会では、地域円卓会議の事例やステークホルダー会議の事例が話された。問題を抱えている当事者や、その当事者を一番近くで支える人を巻き込むべきだという意見があった。多様な連携の主体が参加することが提起された。

田尻:参加と仕掛けづくりは非常に難しいテーマ。例えば、NPO法人格を取得したけれど、会員募集をしても集まらないというケースを見る。震災以降、被災地はボランティアであふれていた。しかし、時間の経過とともに、NPOの職員が増えていって、ボランティアの関わりが減ってきた。財源が減るなかで、市民の参加が改めて重要だと感じている。若い世代の参加も大事だと思っている。


分科会D

《テーマ》若者の巻き込み方
《登壇者》 矢野 明日香 氏    一般社団法人まるオフィス スタッフ
      立花 淳一  氏    まちづくりサークル「からくわ丸」代表
 報告者  成宮 崇史(気仙沼まち大学運営協議会)

■分科会の狙い

若者不足・担い手不足の解決を考える。

■キーワード 「主体的な役割と感謝」

地域の人たちが自分たちごととして動くこと、またそこにきめ細やかケアが必要。一方で、そこまで細やかな配慮はできないという意見もあった。また、そこに来る若者は、いわゆる意識が強い人たちだけであるという課題提起がされた。

若者を受け入れてくださった人たちや参加してくれた人たちに感謝が大切。

高田:今後の地域づくりを考えると、若者というのは欠かせない存在である。サポートが必要だと思う。


《まとめ》

田尻:オープニングでは、持続可能な地域づくりのために、行政とNPOの連携について議論された。NPOは重要なパートナーであることが確認された。ただ、双方やりたいことをやればいいのではなく、目線を合わせた取り組みが大事であることが話された。

さらに、持続可能な地域のためには、5年10年先を見据えていくと、震災体験が薄くなってくる人たちを巻き込んでいくことも大切だと思う。

参加者アンケートからフォーラム全体への感想(一部)

  • 当事者が、これほど集まる事はスゴイと思いました。事務局の皆様、お手伝いの皆様に支えられてこそのフォーラムと、感嘆の思いと感謝の気持ちで居ります。増々のご発展を期待しております。
  • 東北のNPOが集結する機会も少ないので、せっかくなら懇親会などもあればより話が広げられるかな?と思いました。今後の連携のためにも。
  • 昨年も参加しましたが、今回も大変勉強になりました。他の団体がどういう取り組みをしているのか、どういう考えなのかなど自分以外の考えが聞けて刺激になりました。ありがとうございました。
  • 個々のニーズが多様化する中、行政や企業ではカバーしきれない地域課題に取り組むNPOの意義について再確認できました。
    これまですでに多くの機会が設けられてきたかとは思いますが、地域に関わる企業担当者や大学関係者なども交えた、産学官民のパートナーシップの現状やあり方などについても詳しく知る場があれば幸いです。今回は参加させていただき、ありがとうございました。

本フォーラムは、東北沿岸地域の中間支援組織が構成する「NPOサポートリンク」のネットワークに よる事業の一環として開催されました。 ネットワーク事業は、「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」の ご支援により、特定非営利活動法人アットマークリアスNPOサポートセンターと、特定非営利活動法 人日本NPOセンターが実施しています